東京地方裁判所 昭和37年(ワ)1279号 判決
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〔判決要旨〕一、昭和二〇年大蔵省令第八八号金、銀、有価証券等輸出入に関スル金融取引ノ取締ニ関スル件第一条第四号による禁止に違反して、昭和二〇年一〇月一五日以降昭和二二年七月頃までの間大蔵大臣の許可を受けないで中華民国から輸入した小切手上の権利を主張して保護を求めることはできないと解するのを相当とする。
二、銀行が小切手金を小切手の呈示を受けず、かつ、小切手と引換でなく支払つたとしても、その後真実の、または善意の小切手所持人から小切手を呈示して支払を求められた際これを拒絶しえない等の不利益を受けることがあるというにとどまり、これを銀行の過失であるとして不法行為の責を問うことはできない。
〔判決理由〕(第一次の請求原因について)
原告主張の(一)の事実は被告の自白するところである。そして、原告主張の小切手が中華民国からわが国に輸入されたものであることは、原告において争わないところであり、しかも、成立に争のない乙第二号証の一、二によると、この小切手がわが国に輸入されたのは早くとも昭和二〇年一一月一六日以後であることを推認するに足り、この認定をくつがえす証拠はない。ところで、昭和二〇年一〇月一五日以降原告の主張する小切手取得日時である昭和二二年七月頃までの間大蔵大臣の許可を受けないで小切手を中華民国上海からわが国に輸入することは、昭和二〇年大蔵省令第八八号金、銀、有価証券等ノ輸出入ニ関スル金融取引ノ取締ニ同スル件第一条第四号によつて禁止されていたところである。したがつて原告においてその主張する小切手の譲渡を受けたとしても、この小切手の輸入の日時が前記認定のとおりであり、しかも原告においてこの輸入につき大蔵大臣の許可があつたことを主張し立証しない本件では、原告は、前記法条、昭和一六年法律第八三号外国為替管理法第一条および第七条第一項ならびに昭和二〇年勅令第五七八号金、銀又は白金ノ地金又は合金ノ輸入ノ制限又ハ禁止等ニ関スル件第一条第二項の法意にかんがみ、この小切手上の権利を主張して保護を求めえないものと解するのを適当とする。
したがつて、原告の請求は、その他の点について判断するまでもなく、失当である。
(第二次の請求原因について)
原告は、被告銀行が小切手金を小切手の呈示を受けず、かつ、小切手と引換でなく支払つたとし、これを被告銀行の過失であると主張して不法行為の責を問うものである。しかしながら、小切手債務者は、小切手の呈示がなければ、また、小切手と引換でなければ、小切手金の支払をすることを要しない(小切手法二九条三四条参照)が、小切手の呈示を受けず、またこれと引換でなくその支払をしてはならないという一般的義務を負つているわけではない。ただ、もし呈示を受けず引換でなく支払をした場合には、その後真実の、または善意の小切手所持人から小切手を呈示して支払を求められた際これを拒絶しえない等、みずから不利益を受けることがあるというにとどまる。
したがつて、被告銀行が小切手の呈示を受けないで、また小切手と引換でなく小切手金の支払をしてはならない義務を負つていることを前提とする原告の請求は、その他の点について判断するまでもなく、主張自体理由がない。(服部高顕 八木下巽 宍戸達徳)